高齢化社会を迎え、急増する要看護、介護高齢者のQOL向上を目指した生活の援助が必要となってくる。そのため口腔領域では口腔ケアの実践が重要となる。
現在、口腔ケアの定義として、「口腔の疾病予防、健康の保持増進、リハビリテーションによりQOLの向上を目指した科学であり技術である」と山中(1)は定義づけている。
前回のアンケート調査の結果で、口腔ケアの必要性の理解度は高いが、実施に対し技術面での未熟さ、自信がない、不安など個人的問題がみられた。また、スタッフ間でのケア方法が統一されないなどの組織的問題もみられた。そこで、個人的・組織的問題に対して5項目を実施し、この5項目がどれくらいの影響度があったかを年齢別に調査した。
全項目のうち、ケア方法の掲示については全員が「影響がある」との回答であった。経験年数1〜5年、11〜13年の両群においては、全項目「影響がある」との回答。6〜10年の群は5項目のうち1)ケア方法の掲示、3)口腔ケアの勉強会に対しては、知識、技術面共に「影響がある」と回答。また、4)口腔ケアの個別指導、)口腔ケア手順のマニュアル化においては知識面よりも技術面に「影響がある」との回答であった。14年以上の群では、5項目のうち1)ケア方法の掲示のみ知識・技術面共に「影響がある」と回答。4)口腔ケアの個別指導、5)口腔ケアの手順マニュアル化に対しては、技術面よりも知識面に「影響がある」との回答であった。
以上のことから、経験年数に関係なく口腔ケアの掲示によって知識・技術面共に影響度が高いことが分かった。「人は知識・技術面を得る場合、感覚器官を通して情報を得て脳で判断・認識を行う。その情報の基になる外界に関する情報の大部分は目から入ってくる」と鈴木ら(2)は述べている。そのことから、口腔ケアの方法掲示は視覚という人間にとって最も重要な感覚器を利用したことが経験年数に関係なく知識・技術面共に影響度が高いのではないかと考える。また、口腔ケアの方法掲示内容に手順だけでなく写真や絵を加え洗面所に掲示したことも要因ではないかと考える。
経験年数別に見ると、1〜5年の群は「新人」であり知識・技術面共に未熟である。そのため、学習意欲が高いために全項目の影響度が高いと考える。6〜10年の群は「一人前」であり、自己の目標達成に向けて計画を立てて意識的に自分の活動を行うために勉強会での影響度は高い。また、高度な技術の習得を好む傾向があるため知識面よりも技術面での影響度が高いことが考えられる。11〜13年の群は「中堅」である。前回の口腔ケアアンケート調査参加者のため研修後も院内研修会への参加も積極的であり影響度が高いと考える。14年以上の群は「達人」であり、状況を直観的に把握することができる。しかし、全項目において影響度は低い。知識面よりも技術面への影響度がが低い。また、個別に見ると個人差が大きい。このことは、知識・技術への捉え方が思考によるものではなく今までの経験が大きく関与していることが考えられる。
口腔ケアにおける看護の役割は多様かつ重要である。経験年数によって知識・技術面への影響度は様々であることがわかった。しかし、より良いケアを提供していくためには全員が統一したケアを習得し、実施していかなければならない。また、今回の5項目のなかで影響度が低い項目に関しては問題点を分析し、解決していくことが今後の課題といえる。